ミニコロボックル備忘録

そうです、そういうわけです

ハチミツとクローバー、そして「天才」と「凡人」

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存在自体はだいぶ前から知っていたのだがちゃんと読んだのはここ最近。少し読むとハマってしまい全巻集め、色んな人のブログでハチクロに関する感想を舐めるように眺める日がしばし続いた。

最初にハチクロの存在を知ったのは中学生の頃、ニコニコで「片想い」を知り、山田の存在を知り、少しだけ調べてみたのがきっかけ。
その時は悲しい曲だなぁ…と思うだけで深追いはしなかった。

2度目に気になったのは数年前。
1つ上の大好きだった女性の先輩が「人が恋に落ちる瞬間を見てしまった」のシーンを私に送り付けてきて、かつ漫画アプリでちょうどハチクロが何巻かまで無料で読めたのである。そこで3巻ほどまで読んだ。
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そしてここ最近ハマったきっかけは、ある時突然「ムーン・リバー」という曲にハマり、その曲を調べていくうちにリカさんが目に止まったからだ。

リカさんというのはエヴァでいう綾波みたいなキャラクターで、前述の山田さんが片思いしている真山に片想いをされている ショートカットに細身、儚げな雰囲気を纏う未亡人。まさに支えてあげたくなるようなタイプの人。
そしてリカさんに片思いしている真山に片想いしているのが山田あゆみというキャラクターはスタイルがよく可愛いらしく、とにかく恋愛初心者で健気なのだが、私が真山の立ち位置にいたら絶対この子には惹かれないだろうなぁ…というのが分かってしまい、読んでいてとても苦しくなってしまったものだ。
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というのも、あまりにも「元気」で「普通の可愛い女の子」過ぎるのだ。どうしようもなく惹かれてしまう「陰」の部分がなくひたすら「いい子ちゃん」。どうしても陽の側の人間なのだ。普通に健康的に人生を謳歌する側の人間。そら真山のような人間に好かれるのは難しい。
なぜならその真山が惹かれてる相手はとことん儚げでとことん生きる事を放棄してる生命力の欠片も感じないようなほぼほぼ壊れてしまった女なのである。そんなの支えたくなってしまうやんけな。目が離せんやんけな。自分が幸せにしたいとか思うやんな。
ここがホントに見てて苦しかった。
山田と真山が結ばれるとしたら、リカさんが他の登場人物の知らぬ間に亡くなってしまって 数年後まだリカさんを忘れられない真山がなし崩しにずっと傍に居続けたであろう山田とリカさんを一生忘れられないまま 結ばれる可能性がちょっとあるかも…ぐらい?うーん。
リカさんがifの世界で亡くなったとして真山という人間は後追いはしないはずだし、表面的には上手くやっていくだろう。ボロボロになったまま。そんな真山を勿論山田は放っておけるはずもなく、そうなると余計に野宮(後から出てくる山田の王子様的存在)の存在は山田の中で小さいものになり、ずっとずっと真山に縋り支え続けるだろうし。
「リカさん」という大きな存在が、物理的にはいなくなり中途半端に希望が見えてしまうから。真山の心には生きていた頃よりある意味で大きくなってしまったとしても。

私はハチクロの中で好きなキャラははぐちゃんとリカさんだが、どうしてもやはり語るとなると山田ばかりになってしまう。
というのも1番居そうで、かつ見てると苦しくなって、共感性羞恥なども感じてしまって、女の私にとって1番「なりたくない存在」だからである。

儚く弱い特別な存在に負ける強く健康的な普通の女の子

というのが本当に辛い。
私も人間なので特別でありたくて、普通の女の子でありたくないから。
だからやはり人間味の感じないファンタジーな存在であるはぐちゃんとリカさんに希望を見いだしてしまうのである。こんな風に自分の事ばかりで生きていたらいつの間にか王子様(リカさんでいう真山、はぐちゃんでいう竹本、修ちゃん、森田さん)が現れて助けてくれないかなぁなんて。現実はそうはいかないけど。


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もう1人「弱く儚く特別な存在」であるはぐちゃんが居る。
彼女も彼女で1人で社会で生きていく上では絶望的な人間的生活能力の無さと、その代わりにステータス全振りしたかのようなバケモノ並の才能を持っている体の小さい妖精のような子。
本当に、「芸術的才能」だけで今まで生きてきた女の子です。誰からも特別視されて、実際に特別な人間だったがゆえに周りからの嫉妬、やっかみ、それ以外でも「私なんかが何もしてあげられそうにないから…」という理由で周りから一線を引かれていました。

彼女は終盤大怪我してしまい、これからの人生での芸術活動をしていけるかしていけないかの運命の分かれ目に直面します。
これは彼女が「芸術のバケモノ」として生きるか「人間として生きるか」の境目だったように私は感じました。

結局、彼女が取ったのは芸術に傾倒して人生を費やして生きること。
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ここで修ちゃんと人生を生きることを選んだ事に対して色んな意見を見かけましたが、私は2人が一緒に生きることにした事に疑問は抱きませんでした。

はぐちゃん自身が恋していたのは森田さん、ではまず何故森田さんを選ばなかったのか。
彼が与えてくれるのは「刺激」です。はぐちゃんのインスピレーションは森田さんから受けています。とても大きな存在ではあると思いますし、持っている力も対等です。
ですが彼女の人間としての能力を補ってあげられる「普通の人間力」が圧倒的に足りないのです。
はぐちゃんを普通の人間として生きさせてあげられる、人間に繋ぎ止めてあげられるものがありません。
天才と天才同士とは凸と凸のようなものです。宇宙人と宇宙人。2人で居ると上に上にと飛んでいくばかりで、人間としての生き方がわからないまま地に足がつかないのです。
勿論宇宙人同士能力を高め合う事が悪いとは思いませんが、その点では年齢を重ねた修ちゃんの「天才になれず凡人として生きる他無かった、社会で普通の人間をやっている人」がはぐちゃんの傍に居てくれて良かったと個人的に思います。

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(漫画アプリのコメント欄より)

ちゃんと地面に足を付けさせてくれる、普通の人間の修ちゃん。はぐちゃんが人間としての感情を持てる安心出来る雨のような修ちゃん。
賛否両論ありますが、私にはむしろちゃんと納得いく結末だったなと思います。
竹本くんは言わずもがな、まだまだ未熟過ぎました。
森田さんには無い平凡なしっかりとした人間力を持ちながらも、修ちゃんほど人間がまだ出来ていません。はぐちゃんという「人間として生きる力のほぼ無い芸術のバケモノ」と生きていくには本人もまだ幼すぎたのです。

とはいえ彼が大学を卒業して数年ほど歳を重ねて、どっしりした自分自身の基盤が出来上がった頃、修ちゃんに挑戦状を叩きつけるのもアリかなぁなんて思ってはいます。
がんばれ竹本くん、実は結構好きです。
凡人も天才も互いに互いを複雑に思いあっているのである。



私はリカさんやはぐちゃんを見た時、「害虫」という映画の宮崎あおい演じる「サチコ」を思い出す。
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彼女も「不幸な生い立ちのある特別で魅惑的な存在」だ。
周りの人間はサチコにとにかく惹き付けられるし、夢中になっていくし、最終的にほぼほぼ全員が不幸になっていく存在。
そしてここにも「健康的な普通の女の子」が登場する。不登校のサチコを学校に連れ戻し、親友として接してこようとする「夏子」という存在。
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彼女は優等生だ。山田あゆみと同じく健康的で、家庭環境もなんの問題もなくて、友達もちゃんと居て、好きな男の子も居る「普通のありきたりな中学生女子」。
もし夏子を主人公とした視点から見ればサチ子は「なんで?」の塊である。
学校に来ない事、あんなに何も喋らないのに、態度もそっけないのに夏子の好きな男の子はサチ子を好きになる事、最終的には(誰がやったか夏子は多分知らないが)夏子の家に放火してサチ子は楽しそうにケラケラ笑ってたりなどする。夏子に肩入れしてこの映画を見れば完全に悪役だ。
因みにこれはハチクロの山田とリカさんにも言える。
リカさんは綺麗ではあるが無口なのに、自分の方が傍にいるのに、同じコミュニティにいて接する時間も長いのに、こんなに自分は真山を好きなのに、どうしようもなく真山はその「無口で人形みたいに生気のないリカさん」が好きなのだ。リカさんは勿論放火等はしていないが、山田に肩入れしてみればリカさんに対してはやはり良い印象は無い。私はリカさん好きだけど。

これと似た現象を他の作品でも見かけた事がある。少し違うがリゼロのエミリア ← スバル ←レムの三角関係の図とか。
レムがいくらスバルを想おうと、そしてスバルからレムが大事に思われようと、どうしたってどうしようもなくスバルの絶対的な「恋愛感情ありきのヒロイン」はエミリアなのだ。因みにラムお姉様が1番好きです。

あとは「渇き。」の小松菜奈演じる「加奈子」も。
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おやすみなさい。